関東大震災の影響は陸地だけでなく、海底にも及んだ。隆起や津波、土石流によって地形は大きく変えられ、障害物が残された。船舶の安全な航行のためには、海の中の変化を把握し、航海用の海図に素早く反映させる必要がある。東日本大震災後にも迫られた難事業に100年前、どう対応したのか。
当時、海図の作製を担っていた旧日本海軍の「水路部」の記録「震災地測量報告」(1924年12月発行)によると、23年9月1日の発災から9日後、防波堤や灯台などが破壊された様子を駆逐艦で把握した。9月19日からは測量を担う特務艦2隻に小型艇を載せ、房総半島から伊豆半島までを延べ20日間、調べた。
関東大震災では、東京湾や相模湾に高さ10メートル前後の津波が到達したとされ、沿岸付近の被害は広範囲に及んだ。「報告」にも、隆起と沈下に伴い、水深や海岸線の変化が見られるとして、「従来の海図を改版するの必要を生じた」と記されている。
重りをつけた縄を海中に垂らして
このため、10月上旬から翌年1月下旬にかけ、第2次測量が行われた。海軍少将の水路部長が指揮をとって、特務艦4隻に担当者ら計約60人が乗り込み、改めて詳しく調べた。現在のように超音波で水深を測る「音響測深機」はなく、重りをつけた縄を海中に垂らして水深を測り、重りの付着物から、海底の地質を探るような作業が中心だった。
成果を記した「測量関係綴(…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル